<Burnt cream バーントクリーム>
「Burnt cream(バーントクリーム)」~なに?やけどか何かに塗るクリームのこと? なんて思わず思ってしまいそうな名前ですが、これをフランス風に言い代えると、実は皆さんよくご存知のデザート、「crème brulee (クレームブリュレ)」。なるほどどちらも訳せば「焦がしたクリーム」で同じ意味なのですが、フランス語にした途端に一気におしゃれな響きになるのですから、不思議なもの。そしフランス語のほうが格好いいと感じるのは日本もイギリスもご同様。1800年代後半からイギリスでもフランス風に「クレームブリュレ」と呼ぶのが主流です。ですが最近「これってもともとはフランスよりイギリスのほうが古くから食べているデザートらしいわよ」、ということが知れわたり、イギリスのスーパーなどでもクレームブリュレではなく「Burnt cream(バーントクリーム)」、「Cambridge burnt cream(ケンブリッジバーントクリーム)」などと称して売り出すところがでてきています。
ところで、バーントクリームはいいとして、何故突然ケンブリッジが出てくるのかと言うと~ここが今日の大切なとことろ。イギリス版クレームブリュレのバーントクリームはあの有名大学、ケンブリッジのトリニティーカレッジが発祥だといわれているからなのです。そのため「Trinity burnt cream(トリニティーバーントクリーム)」、簡単に「Trinity cream(トリニティークリーム)」と呼ばれることも。確かに料理書に初めて登場するのはフランスの François Massialot 著「Le cuisinier royal et bourgeois」(1691)なのではありますが、ケンブリッジ大学のトリニティーカレッジでは1617年にすでにサーブされていたのだとか。とは言え、正確な文書による証拠はないため、「言い伝え」というかたちではあります。フランスはフランスで、これはわが国発祥のトラディッショナルなデザートだと主張していますが、1731年にMassialot の料理書が再版された際には、Crème brulee はCrème Anglaise (イギリスのクリーム)と名前が代えられていたこともあり、もともとはやはりイギリス発祥だったのでは?とわたしもついついイギリス側に肩入れしたくなってしまいます(笑)。まぁいずれカスタードに砂糖をかけて焦がすというシンプルなお菓子でありますから、これ以外にもスペインのCrema Catalana はじめ似たようなお菓子は世界各国にあるわけで、どこが発祥かはきっとこれからも謎のまま、、。ちなみにケンブリッジのトリニティーカレッジでは今も時折デザートにバーントクリームが登場するのだとか。本家本元のそのお味、一度食べてみたいものです。イギリスの古い料理書のバーントクリームのレシピをみていると、今の時代のクレームブリュレに欠かせないバニラは入っておらず、代わりにレモンピールやオレンジフラワーウォーター、時にはシナモンやナツメグが香り付けに使われています。ちょっと意外な感じもしますが、それもなんだか美味しそう。現代のトリニティーカレッジのものはバニラかしら、それともナツメグやレモンだったりするのでしょうか。
今日は今どきの一般的なCambridge burnt cream のレシピをご紹介しますが、たまにはバニラの代わりに昔風にオレンジフラワーウォーターなどで香りづけしてみるのも楽しいかもしれませんね☆
<ケンブリッジバーントクリーム>
① 生クリーム(乳脂肪40%台)150ml、牛乳250ml、バニラビーンズ少々を鍋に入れゆっくり温めます。
② 卵黄3つとグラニュー糖40gをよくすり混ぜ、先ほどの①を加えて混ぜ合わせます。
③ これを小さな6つの耐熱の器に注ぎ、お湯を張ったバットに並べて150℃のオーブンで焼くこと約35~40分。ようやく固まる程度に焼けたら冷蔵庫でしっかり冷やします。
④ 食べる直前、表面にたっぷりのグラニュー糖をかけ、バーナーでお砂糖をキャラメル色になるまで焦がしたら完成です☆